樫野くんはどうしたらいいのかわからない、という顔で呆然と美都を見ていた。
私だって、どうしたらいいのかわかんないよ…!
更にややこしいことになったのは、その直後。
「……綺深?」
「!?」
不意に割り込んできた声。
その声に、私は反射的に振り返った。
……どうして、こんなことになるの?
「きょ、すけくん…」
「……その手、何?」
その声で、樫野くんに手首を掴まれたままだったことを思い出す。
ああ。
もう、どうしたらいいのかわからない。
「……っ」
気が付いたら。
掴まれた手を振り払って。
……私は、京佑くんのいる方とは逆方向に、駆け出していた。