「メールで呼び出さなかったのは、また勇気が出るかわかんなかったからだ」


「は?」


「メールだったら、お前絶対『なんで?』とか返信してくんだろ」


「……まぁ」


「そういうの、無理だと思った。そういうやりとりで、言う勇気、無くなる気がして」


「…あの、ちょっと話が見えないんですけども」




私は今、きっと相当困った顔をしてると思う。



そんな私を見て、樫野くんは小さく笑った。



「……今日さ、めっちゃきつかったよな、時間割」


「え?あ、うん」




いきなり話題が変わってびっくりしつつ、そう返す。


それから、他愛のない話をした。


樫野くん、自分では気付いてないと思うけど、なんだか、変だった。



心ここにあらず、って感じ。



私だって、こんな話をするためだけに樫野くんが私を呼び出したわけじゃないことくらいは分かる。


樫野くんがわざわざ歴史の先生の奥さんとの馴れ初め話を私に聞かせようとして呼び出すとは思えないし。



「……」



10分くらい経った頃だろうか。


ふと、沈黙がおりた。