「美都!!」
叫びつつドアを開けたが、美都は部屋にもいなかった。
「美都ならさっき飲み物買いに行ったよ」
メンバーのひとりがそう言って教えてくれる。
只今の時刻、21時58分。
…待てない!
「そっか、ありがとう!」
私は教えてくれた子にお礼を言って、財布もケータイも持たずに部屋を出た。
ぱたぱたとスリッパを鳴らして館内を早足で進む。
「か、樫野くん!」
約束していた渡り廊下に着いたときには、22時を少し過ぎていた。
「…岬」
男子の部屋のある別館と女子の部屋のある本館を結ぶ、簡素な渡り廊下。
勉強自体は本館にある大部屋が主に使用されるので昼間の行き来は多いが、夕食以降、ここはめったに人が通らない。
樫野くんは、渡り廊下の端にある階段に座って私を待ってくれていた。