「優輝先行っていい!綾奈まだまだだし」
肩より20cm程下まで伸ばした髪を
赤いリボンで結ながら叫ぶ。
あたし、藤咲 綾奈の朝はいつもこうだった。
「いいよ、待ってるから」
優輝が朝来てくれるようになって
もう何年になるんだろう?
マンションのお隣さんであり
幼稚園からの幼なじみでもある優輝は
朝に弱い綾奈を起こしに来てくれる。
彼女でも、ないのに。
「でも優輝、遅刻・・・」
「俺がいた方が綾奈も早いでしょ?」
そう言って笑う。
いつもそうだ。
綾奈のせいで何かあっても
優輝は絶対に許してくれるんだ。
綾奈が、幼なじみだから。
彼にそれ以上の理由はないのに。