「・・・~~~」
頭の中で声がする。
まだ、夢の続きが・・・?
「~~奈お~・・・て」
徐々に言葉が聞き取れ始めた時、
重たい瞼を上げた。
「綾奈起き・・あ、起きた?」
甘い声と視界に飛び込んで来た眩しい笑顔。
夢の中と何も変わらない、岡崎 優輝。
「・・・起きた」
言葉の意味通り体を起こして目を擦る。
「早く支度しないと遅刻しちゃうよ?」
笑顔を崩さずに彼は言う。
“「遅刻って、まだまだ間に合うでしょ?」“
床に落ちたリボンを拾いながら
そう言おうとした。
が、口にする前に優輝が言った。
「・・・って言っても、もう8時17分だけど」
あれ?
それって・・・
「ね、ねえ、優輝?」
「ん?なに?」
「本鈴が鳴るのって・・・」
答えは分かっているものの
おそるおそる顔を向けると
彼は一層甘く微笑みながら
「もちろん、8時20分だよ」
・・・完全に完璧に遅刻だ。