「じゃあな…おやすみ」
パタン…
星良の部屋の扉を閉めると
俺は深いため息を付く。
参ったな…
明日香の名前を出され
アイツが絡んできたら、益々ややこしい事になると思い
フィットネスクラブに連れてってやると言ってしまったが
気が重い…
どうしたものかと考えながら
自分の部屋の前に立った時だった。
到着音と共にエレベーターの扉が開き
あの生意気な成宮が現れた。
「あ、水沢専務じゃないですか…
専務も今、帰りですか?」
「あ、あぁ…」
成宮は少し酔ってるのか
トロンとした眼で、可愛気のない笑みを浮かべてる。
「もし良かったら…俺の部屋で、一杯やりません?」
「はぁ?」
思いもよらぬ成宮からの誘いに
自分の部屋の扉を開ける手が止まった。
「水沢専務に聞きたい事があるんですよ。
付き合ってくれませんか?」
「……」
「いいじゃないですかー
ちょっとだけ…」
半ば強引に成宮に背中を押され
部屋に押し込まれる。
「ちょっとだけだぞ…疲れてるんだ」
なんせ、さっきまで星良を抱いていたんだ…
体力は限界。
「はいはい。分かってます」
まだ引っ越して来たばかりだからか…
通されたリビングは、ほとんど何もない殺風景な部屋だった。
「適当に座って下さい。
いい酒があるんですよ」
成宮のヤツ、やけに機嫌がいいな…
なんだか気味が悪い。