次の日
とても目覚めの悪い朝だった。


あれからどのくらい飲んだのか…
記憶にない。


玄関の扉を開けると、無意識に星良の部屋を見ている俺が居る。
いつもなら、アイツと一緒に下まで降りるんだが
さすがに今日は止めておくか…


エレベーターの中で一人
昨夜よりは冷静になった頭で
色々、考えてみた。


いい機会かもしれない…


このまま別れれば
星良を自由にしてやれる。


アイツに人並みの幸せを与えてやれるかも…


そう考えながらも
俺の気持ちはまだ揺れていた。


星良の居ない生活に
俺は耐えられるだろうか…


…全く、女々しい男だな…俺は…


誰も居ない静まり返った駐車場に響く低音のエンジン音さえも
今朝は虚しく聞こえ


見上げたどんより曇った灰色の空からは
チラチラと粉雪が舞い降り
フロントガラスに小さな水滴を残し消えて行く…


今日は寒くなりそうだな…


そう思うと、寒がりの星良の顔が浮かぶ。


いつまでもウジウジ考えてても仕方ない。
脳裏に浮かんだ星良の笑顔を打ち消し
アクセルを踏み込んだ。


会社に到着すると、俺は最上階にある専務室には向かわず
社長室の扉をノックした。


「お早う御座います。社長」

「おぉ…どうした水沢…こんな早く」

「話しがあります」


せめて俺の出来る事をしてやろう…


「星良のプロジェクトのモデルの件ですが
やはりアイツに選ばせてやろうと思いまして…

申し訳ないですが、理子との契約は白紙にしてくれませんか?」