「あぁ…」
『あら?元気の無い声ね。
彼女と喧嘩でもした?』
「バカ言ってんじゃない。
で、用件はなんだ?」
『用事が無いと電話しちゃダメなの?
あなたの声が聞きたかった…って言ったら?』
「俺の声を?お前…酔ってるのか?」
『まさか…まだ仕事中よ。
さて、冗談はこのくらいにして…
成宮蒼は、どう?
ちゃんとやってる?』
「その話しか…仕事は…それなりにな…
でも、性格が最悪だ。
よくもまぁ、あんな奴、推薦してくれたよな。
ハッキリ言って、迷惑してる」
『ふふふ…
そうね。確かに性格に問題アリかもね。
でもね、才能は有る子よ。
それは私が保証する。
だからそんな事言わないで
宜しく頼むわ』
「ったく…お前の頼みじゃなかったら
あんな生意気なガキ
とうにクビにしてる」
『あら?嬉しい事言ってくれるじゃない。
でも、私の事は彼には秘密にしといてよ』
「分かってる」
『それと…あの事だけど…』
「あぁ…その事か…
大丈夫だ。上手くやるよ」
『そう…』
「心配するな。悪い様にはしない…」
『えぇ…じゃあ、お願いね。
まだ仕事が残ってるから、また電話するわ』
「あぁ、仕事も大事だが、あんまり無理するなよ」
『相変わらず優しいのね…有難う。
おやすみなさい』
「おやすみ」
静かに受話器を置くと
またため息が漏れる。
星良の事もそうだが
俺を悩ますのは、それだけじゃない。
数々のしがらみが、俺を雁字搦めにする。
全てを捨て
星良と2人で生きていけたら
どんなに幸せだろう…
それが出来たら、苦労はしないよな…