内容を聞き終えた成宮は、暫く絶句していた。


「…本当…ですか?」

「もちろん本当だ。
でもな、まだ相手方から正式なOKはもらってない。交渉段階だ。

しかし、ほぼ確定したと言っていい状態になったから、君に話してる。
分かってると思うが、まだこの事は口外しないでくれ」

「は、はぁ…。
それは、分かってます」

「我が社と競り合ってるライバル会社もまだ諦めていないだろうし、情報が漏れるのは困るからな」


社長に念を押され緊張気味に頷く成宮


「この企画を成功させれば、君の評価はかなり上がるだろうな」

「は、はい。頑張ります!!」


珍しく素直に返事をしてる成宮を、俺は複雑な気持ちで眺めていた。


こんな時に不謹慎だが、それは仕事とは全く関係のないプライベートな感情


もう成宮は、星良を抱いたんだろうな…


誰にも見せたくなかった星良の全てを…
俺だけが知ってる星良を…
コイツも知ってるんだな。


そう思うと、嫉妬で怒りが込み上げてくる。


だが、もうその感情は封印しないとな。
俺に嫉妬する資格など無いのだから…


俺は男としての幸せより、父親を選んだんだ。


社長室を出て行く成宮の背中を見つめながら心の中で呟く。


散々、星良を泣かせた俺が言うのもおかしいが…


星良を…絶対、泣かせるな。
いいな!!成宮!!


そして俺は専務室に戻り、出張で留守にしていた間に溜まった仕事を黙々とこなす。


出来るだけ頭の中を仕事一色に染めていたかった。
その理由は…他の事…つまり星良の事を考えたくなかったからだ。


「んっ?そろそろ、昼か…」