そんな事を考えても、もう遅い。
社長に頼まれ断り切れず、理子をモデルにすると承諾してしまった。
もちろん、星良に相談無しで勝手にモデルを決めればヘソを曲げるとは思っていたが、決定してしまえば星良も納得するだろうとタカをくくっていた俺の考えが甘かったんだ。
あれほどまで星良が反発するとは、全くの予想外。
それほどこの企画に掛けていたって事を、俺は見抜けずにいた。
そして、事もあろうに、星良は理子をモデルから降ろしてしまった…
西野先輩が怒るのも無理はない。
ため息を付きソファーに腰を下ろすと、社長が向かいの席に座り、俺に頭を下げる。
「私と水沢で大きくした会社なのにな…
お前を取締役から外す事になるとは…情けない」
「いえ、俺が取締役から外れるくらいで済むなら御の字ですよ。
社長がかばってくれなかったら、明日から無職でしたから…」
そう言って笑ってみせると、社長がホッとした顔で
「こんな時に悪いが、次の企画の作業を始めてくれないか?」と遠慮気味に言ってきた。
次の企画…
それは、ピンク・マーベルの社運を掛けたプロジェクト
まだ極秘に進められいる企画だ。
そして俺自身にとっても、重要な意味を持つ仕事
「はい。それでは、アイツを呼びますか?」
「そうだな」
そして、やって来たのは…
「失礼します」
成宮蒼
立ち上がった社長が自分のデスクに座り直し、成宮を真っすぐ見つめる。
「成宮部長補佐、君には本日付けで部長に昇格してもらう」
そう告げると、今回のプロジェクトについて話し出した。
「実は、あるデザイナーとのコラボ企画があってね…
君には我が社の代表として、その企画に参加してもらいたい」