当然、納得出来るものではなかった。


だが…


「パパ、私がホントに謝って欲しいのは、仁さんじゃなく
あの女…島津星良よ!!
あの女を今すぐここに呼んで、私の目の前で土下座させて!!」


星良に…土下座だと?
そんな事、させられるか!!


「待ってくれ!!」


俺は理子の前に跪(ひざまず)き、額を床に押し付けていた…


星良を守りたい…
その一心で…


「今回のモデルの件は、俺の責任だ。
だから…頼む。俺の謝罪で許して欲しい…」

「仁さん…あの女をかばうのね?」

「違う!!島津は俺の部下だ。
部下の不手際は、上司の責任…
それだけだ」

「なら、水沢、理子にした事の責任はどう取るつもりだ?」


西野先輩の言葉に堪らず顔を上げると、理子が薄ら笑いを浮かべ俺を見下ろしていた。


「パパ、もうその事はいいわ。
こんな情け無い姿の仁さん見たら、冷めちゃった」


したたかな女だ…
あのキスの本当の理由が俺の口からバレる前に許すってワケか。


「理子、何を言ってる?
大事な娘をオモチャにされて、このまま許せると思うか?

水沢には、この会社を辞めてもらおう」


涼しい顔でそう言った西野先輩に、社長が驚き声を荒げた。


「な、冗談はやめて下さい!!
先輩はピンク・マーベルを潰す気ですか?

この会社は水沢が居たからこそ、ここまで大きくなったんです。
それは先輩も十分、分かってるはずだ!!

水沢を辞めさせるなら、私も社長を辞任します」


社長…


「…バカな事を…」


社長の言葉に、流石に動揺を隠しきれない西野先輩。
社長が辞任となれば、会社の経営が乱れ株価にも影響する。
そうなると、大株主の西野先輩の損失は計り知れない…


苦虫を噛み潰した様な顔をした西野先輩が吐き捨てる様に怒鳴った。


「仕方ない。今回だけは大目に見てやろう…
だが、次の取締役会で、水沢の取締役の任を解く。
これだけは、何があっても譲らないからな!!」