「じゃあ、行きますか」


 エイジはゆっくりと船室を出ていった。

 その後に、レンも続く。

 ユイも歩きだそうとして、ふと、ミサトを見た。


「どうしたの?」

「ううん、何でもない」


 そう言うミサトの複雑な表情に、ユイは悲しそうに目を伏せた。

 天涯孤独のミサトにとって、ウー・イー・シーという組織は、自分の存在を認めてくれる唯一の場所だった。

 自分が生きていてもいいという、たった一つの。

 それを、壊しに行くのだ。


「…大丈夫…?」


 その心中を察して、ユイはもう一回尋ねた。


「うん…大丈夫。だって、全てを壊すのが、ジジイの意志だったんだもん」

「ミサト…」


 その言葉を聞いて、ユイはそっとポケットに忍ばせた鍵に手を触れた。