「あの組織に狙われたターゲットは、例え地の果てまで逃げても必ず追ってくる。それはミサト、あなたが一番よく知ってるはずでしょ」


 ユイの口調には、あきらかに非難の意がこめられていた。

 いつも冷静な彼女が、ここまで感情を曝け出すのは珍しいことだった。

 だから、情けないながらも男二人は黙ってその成り行きを見守ることしかできないでいるのだが。


「仮にもし、うまく逃げおおせたとしても、残された私たちはどうなるの?」

「………」

「あの組織に狙われて、一生逃げ続けるつもり? いつ誰がどこで命を狙ってくるかわからないまま、死ぬまで逃げる訳!?」


 ミサトは何も答えなかった。

 またリビングに、しばらくの沈黙が流れる。

 だがしばらくの後、かろうじて聞き取れるくらいの小さな声が、ミサトの口から漏れる。