「どうして髪なんて染めたの?」
静かな階段にあたしの声が響く。
きらきらと光る君の髪の毛を撫でながら、まるで子供をあやすように口を開く。
「どうして?」
少しの沈黙の後に、航はそっと口を開いた。
「もう、疲れたんだ」
たった一言。
その一言であたしは理解した。
「真面目ちゃんをやるのが?」
航は口を開かずに、首だけ縦に振った。
あたしは、気づいていた。
でも、見て見ぬふりをした。
「ごめんね、航」
今のあたしには、航の髪の毛を撫でてあげることしか出来ない。
「ごめん」
あたしたちは、どこで間違ってしまったのだろう。