だが。
全て杞憂であることも考えられる以上、雅を学校に行かせないで閉じ込めておく事は、できない。
「来月あたまに、俺の予定がある。そこは外せねぇ。だから、1週間、遅くとも2週間でなんとかしろ」
難しい顔をしていた宇田川が、ふと雅に視線を移した。
取り乱すでもなく、ひたすらに凱司を見つめる目が、わずかに揺れて。
小さく、小さく息をついた雅は、自分が危険かも知れないことなど、まるで気にしてはいないように見えた。
「…わかりました。至急、そのようにしましょう」
余計な議論はしない。
あくまで意見を述べるだけだ。
自分のなすべき全ての決定権は、この大きな、金色の髪を持つ青年が握っている。
宇田川はそれに誇りすら持っていた。
鷹野一樹を手元に置くと言い出した時も。
鷹野息吹への高利貸付を凍結させ、治療させる、と言った時も。
自分は引退する、と言った時も。
従って来て道を間違えた事など、ない。