雅は。
髪を整えて、言われた通りに顔を洗おうと鏡を覗き込んだ。
目元から耳に向かって、涙の跡が薄く残っている。
重力を考え、顔がどの角度に上がっていたのか、そっと頭を上げてみた。
自然と薄く開いた唇に指を触れて。
ざわり、と背筋を上がる感覚に身震いした。
怖い、けど…、と思う。
精一杯の抵抗の後。
気を失うように脱力した、後。
…とても、甘いキスをしてくれた気がする。
甘噛みされた下唇から、背筋を走る痺れに、下腹部が収縮した気が、した。
下唇を指でなぞり、恐怖とも快感とも取りにくい大きな波に。
自分はキスで感じたのかと。
身震いを、した。