「解りました、すぐに捜し出して連絡いたします」
しかし、あの時の一樹さんは怖かったですね、と思い出したように苦笑した宇田川に、凱司もまた苦笑いで煙草を勧めた。
「ところで凱司さん、その腕はどうなさったんですか?」
「あ?」
指差された左腕を見れば、くっきりと爪の痕。
みみず腫れのように赤くなったラインの終わり部分に、食い込んだ痕がぷつぷつ腫れている。
明らかに、時間が経てば消える痕。
まだ新しい、痕。
「ここに女性を呼ぶなんて珍しいですね。本気のかたですか」
「あ…いや……」
珍しくたじろいだ凱司を、宇田川は面白そうに眺めていた。
「…宇田川…本家には言うな。まかり間違って嫁にでもされたら鷹野に刺される」
観念したように小さく呟いた凱司に、初めて宇田川の眉がひそめられた。
「一樹さんの大切な方に、そんな引っ掻かれるような事を?」
そうだ、とも、違う、とも言えずに、凱司は目を逸らして。
煙草を、くわえなおした。