凱司は、眉間にシワを寄せたまま、目を閉じた。
鷹野の言うように、少々無理があろうと、拘束しておけば良かったのかも知れない。
鷹野の両親が自殺した夜の事を、ふと思う。
あの夜は、宇田川が。
息吹の身柄を押さえに行っていて。
その後の予定を合わせるために、たまたま一緒に、いた。
その時に初めて見た鷹野の、目。
今でも忘れられない。
…死ねばいい、と。
傷んだ金髪をだらりと長く乱して、真っ赤なバイクに跨がった少年だった、彼の先に。
生きているのか死んでいるのかもわからない位にボロボロになった男が、うずくまっていた。
無言で駆け寄った宇田川が間に合ってなければ、息吹はそこで間違いなく死んでいたはずだ。
あの時の、鷹野の、目。
拳から血を流し、止めに入った宇田川もろとも轢こうとした鷹野の目は、狂気に満ちてはいたが、本気だった。