思いの外、強く握りすぎたのか、雅の手首に痕が残った。



「凱司さんの、だから…手出しされたら…凱司さんが困る、っていう…意味ですか?」


乾かないままの瞳は、それでも涙は止まっていた。

まだ震えの止まらない指先で、手首のあとをさする。


凱司さんに迷惑かけたらいけない、鷹野さんを困らせたらいけない、って思ってた。

のに。


「……こんなこと、させちゃって…ごめんなさい」



徐々に赤みが差してきた雅の頬を、面倒そうに一瞥すると。

凱司は小さくため息をついて、新しく煙草に火をつけた。



「もうしねぇよ、多分」

「…ん。もう、してくれなくて大丈夫です。ちゃんと、守る」


してくれなくて。

言葉のニュアンスを確かめたかのような、僅かな間を置いて。

雅は一気に紅潮した。



「あっ…し…して欲しいとかじゃなくて…!!」


ようやく顔を上げたと思ったら、もう取り乱している雅に。




「ばーーーか」



顔を寄せて雅の目を見つめたまま。

馬鹿にしたような笑みを浮かべて。


煙草の煙を、吹き掛けた。