「…………っ!」


ぼろぼろと溢れる涙は止まらなかったけれど、雅の肌に赤みが差した。


「なんだ、こんなんでも怖いか。相当重症じゃねぇか」

ふ、と馬鹿にしたように笑む。



ようやく細い手首を離した凱司は、僅かに苦々しい色を目に浮かべて。

嗚咽を必死に抑え込む為に息を止める雅を、見つめた。



「…俺も、鷹野も。お前が本当は“男”を怖がってる事を知ってる」

どれだけ、平気な素振りをしても。
どれだけ、普通に振る舞っていても。

笑って、拗ねて、少し心を許してたとしても。



「俺にすらリアルな“男”を見た瞬間に、震えるほど怯える」

そんなヤツに、“平気だ”なんて言われた所で腹立つだけだ。



「息吹になんか、触らせやしねぇ。お前が投げ出さない限りは」

お前は、俺のだ。



まるで。
それが全てであるかのように、
凱司は。

不敵に唇の両端を、上げた。