「…そ、んなの…やだ」


掠れそうな声で言う雅は、顔をくしゃりと歪ませて、ゆっくりと目を開けた。


「あたし…平気ですもん……」



自信無さげに瞳を揺らし、雅はふいにしゃくりあげた。

「大丈夫だもん……っ!」



悲痛な声に、力はなかった。

血の気の引いた唇を更に震わせ、ぎゅ、と再び目を閉じる。


零れて流れる涙が、凱司の髪を濡らすばかりでなく、蛇をも伝った。


小刻みに、首を振る。



こんだけ怯えて、何が大丈夫だ、と凱司は低く囁いた。


「体も心も傷付けてまで、自分で解決しようとすんな」



透き通る程に血の気の引いた、雅のまぶたが、小刻みに揺れた。



「…俺が、いる」


凱司は、先程とは比べようもないほどに、そっと。


唇をついばんだ。