更に距離を詰めた、凱司の膝の間に、椅子ごと閉じ込められて。

不安げに目を揺らしたけれど。


それでもまだ、雅は顔を上げていた。


右耳を指先で掠め、後頭部にまわされた凱司の左腕の蛇は、雅の髪をきつく掴み、引く。



だけどな、と凱司は息のかかる距離まで顔を寄せ、上向かせた雅の揺れる目を、睨み付けた。




「できねぇ訳じゃ、…ねぇんだよ」


低く呟くと同時に、凱司は。




噛みつくような、キスを、した。



びくり、と明らかに身を震わせた雅が、一瞬目を見開き、拒絶するように凱司の肩を押す。



「…やっ……!!」


小さく悲鳴を洩らし、必死で押し返そうとする雅の抵抗もそのままに。

左手で抱え込むように頭を押さえつけ、二度、三度と合わせる角度を、変えた。


息苦しいまでの執拗な唇に、生理的な涙が滲む。

必死に押し戻そうとする左手も。


邪魔だ、とばかりに。

掴まれた。