あたしは、大丈夫だから。


そう繰り返す雅の、その容姿とは不釣り合いな落ち着いた目に、鷹野も凱司も、騙されはしなかった。



「泣かれるよりはマシ…か?」

「絶対そんな事ない」


「だよな。…ったくガキの癖に変な度胸つけやがって。少しは身の危険を危険として認知すりゃいいものを」



昨夜までは確かに沈みがちで、顔色も冴えなかった雅は。

てきぱきと朝食を片付け、リビングのテーブルにノートを広げていた。


今日から出勤の鷹野は、身支度を終え、そんな雅を苦しそうに見つめて、息を詰める。



「そんな目ぇすんな。俺がずっと傍に付いとくから」


見兼ねた凱司が、鷹野の頭をぽんと、軽く叩く。



「……なんかそれも腹立つし」


珍しく拗ねたような声色に、凱司は可笑しそうに、口元を歪ませた。


「お前、キャラは意地でも死守しろよ」

「…あんたに言われたくない」


ようやく苦笑した鷹野の背を押すと、凱司もまた、大丈夫だ、と繰り返した。