「息吹は……女の子何人も…乱暴してて、ね」


ぴくり、と雅の肩は震えるけれど。
更に強く抱く鷹野の指も、震えている気がした。


「あいつ、薬やっててさ…凱司んとこの系列から金借りて…どうにもなんなくなって」


鷹野の苦し気な声に、雅は、抱き締められるまま、じっと顔を上げずにいた。



「うちの財産食い潰した後は、女の子に薬飲ませて…犯して…現金はもちろん、小さなアクセサリーまで…身ぐるみ剥いで」



雅の首に光る、プラチナのネックレスをなぞる。


「そのうち、俺の担任が自殺したんだ。新婚で、妊娠してたのに…俺に会いに来て、すぐに」

「……鷹野さんに?」

「うん、あんまり学校行かなかったからね」


息吹は…弟を心配する兄として、担任に近づいたんじゃ……ないかな。



「…あいつの部屋から、担任の結婚指輪が出てきたよ。名前が彫ってあったから売らなかったのか……後でまとめて売る気だったのか」


雅を抱く力を少しゆるめた鷹野の、顔を見上げて良いものか悩んだ雅は。

そのままそっと、鷹野の背に腕を回した。



「それが決定打で…両親共に、首吊っちゃった。息吹は、…疲れた顔して、笑ってた」



だから、と。

再び力のこもる鷹野の声が、低く耳に触れる。



「雅ちゃんが息吹の目に触れる……なんてのは、嫌だから…少し、守らせて」


頭を掻き抱く鷹野の切羽詰まった声が。

はっきりと、震えた。