「…俺ね、両親共に自殺されちゃっててさ」
「…え」
ゆっくりゆっくり歩きながら、穏やかに話を始めた鷹野は、ああ、この為に車まで二人で行かされてるのか、と。
今頃煙草に火を付けたであろう凱司に舌を巻いた。
「俺が16歳だったから…息吹は24だ。俺も…真面目じゃなかったけど、息吹は……っうわ!!」
黙って聞いていた雅が、ガクン、と階段を踏み外した。
慌てて抱き抱えた鷹野もろとも、へなへなと座り込む。
狭い階段の同じ段。
どちらからともなく、顔を見合わせた。
「びっ…くりしたあ…」
ふと、切な気な、息の詰まったような色が鷹野の目に過る。
「…気を付けないと、怪我でもしたら……」
ぎゅうっ、と。
鷹野は、タガが外れたかのように、突然雅を抱き締めた。
自分の胸に雅の頬を押し付け、強く、背中を抱いて数秒。
息吹は…、と口ごもった。