深くため息をついた鷹野が顔を上げた時には。
いつも通りとは行かないまでも、唇の端は上がっていた。
「ごめんね、びっくりさせて。大丈夫だから」
髪を撫でるままに引き寄せて、一度、強く頭を抱くと、すぐに離す。
「さ、お菓子取って来いってさ。帰って来た早々、偉そうな男だよね」
ふふ、と。
静かに笑う鷹野は、雅の手を取る。
「…息吹さんて…」
玄関で靴を履きながら、遠慮がちに呟いた雅に、鷹野は一瞬唇を噛んだ。
「…うん」
「……何した人、なの?」
ドアを開け、続く階段をゆっくり降りながら、鷹野は。
心配そうに、ちらりと雅を見て。
…俺ね、と呟いた。