「俺に…似た男」
思い当たる節があるのか、鷹野は眉をひそめたまま、ゆっくりと息を吐いた。
ふと、雅が視線を上げる。
「ん、と、先週のどこかで…コンビニにシャーペンの芯買いに行った時……そこのマンションの場所、訊かれた、から…」
指を差した先は、玄関の方向。
道を挟んだ向こうにある、凱司所有の、ワンルームマンション。
「あたし帰る時だったし、一緒にそこまで、来たけど…」
鷹野さんに、似てたかしら。と首を傾げた。
「……そいつに、何かされたか?」
何が気掛かりなのか、凱司は雅の頭から手を退かそうとはしなかった。
「…何か、って? そこまで一緒に歩いて来ただけ、です」
すっかり混乱して、怯えた目を揺らした雅の様子に、わずかに慌てたのか、凱司はようやく手を離した。
「悪ぃ、大丈夫ならいいんだ」
小さく息を吐いて、凱司はアイスコーヒーに口をつけた。
「待て、凱司。話を終わらせるな。息吹がどうしたって?」
「…いぶき?」
首を傾げた雅が、鷹野と凱司とを見比べる。
苦虫を噛み潰したような凱司の表情と、いつになく難しい顔をした鷹野に、それ以上聞いてはいけない気がして、雅は口をつぐんだ。