「雅」
「…はい」
アイスコーヒーを渡せば、僅かに表情を和らげた凱司が、再び雅の頭に手を乗せた。
「……鷹野に似た顔の男と、会った事あるか?」
「…え?」
「鷹野に、似た男だ」
椅子を引き出し、雅を座らせると、凱司は真っ直ぐにその目を見つめた。
「ん、と……。ない、と思います」
「…そうか」
量った熱湯を注ぎ終わった鷹野も、黙って座る。
雅は訳の分からない流れに、不安げに鷹野を見たけれど、ぐい、と頭ごと凱司の方を向かされた。
「うちに来てから、知らない男と会話した覚えは?」
「会話…ですか?」
視線を落として、目に入った凱司の薄墨の蛇を見つめながら、雅は必死に頭を巡らせた。