love complex~女は胸がすべてじゃない!!~

・・・

追いかけようとしたけど、

それはやめた。

・・・

わかってないのはどっちだよ?

・・・

ずっとずっと一緒で、

胸がない事なんて、

全然気にならないのに・・・

・・・

オレが何度も恋愛相談してたのは、

千波、

お前の気を引きたいが為。

・・・

でもお前は、

オレの事なんて、

ただの友達としか思ってない。

当てつけに、

付き合っても見たけど、

どれも長続きするわけがないんだ。

・・・

オレの気持ちはいつも、

千波に向いてるんだから・・・

・・・

『遊びも程々にね?』

千波に言われた言葉。
確かに、遊びかもしれない。

相手には悪いけど、

気持ちが入ってないんだから。

・・・

でも最近は、

それも止めた。

・・・

千波に告白を決意したから。

・・・

元カレに傷つけられ、

泣き止まない千波を、

一晩中慰めてた。

・・・

もう、他の男になんか、

千波はやれない。

・・・

今まで、

自分の気持ちは隠してきた。

これまでの関係を

壊したくなかったから。

・・・

でも、

もうそんな事を言ってる場合じゃない。

ちゃんと、

千波を幸せにしてやりたい。
最初は戸惑うかもしれない。

・・・

今まで、

ただの友達だったんだから。

・・・

それでもオレの手で、

幸せにできるなら、

千波を絶対幸せにする自信はある。

・・・

そんな時、

またしても邪魔者が入るとは…

・・・

澤田敦紀と言う男。

容姿は分からない。

ただのおじさんかもしれない。

でも、

それでもし、

千波がそんな奴と、

恋愛関係になられたら、

オレの気持ちは行き場を失うことになる。

・・・

告白する前に、

玉砕だけはしたくない。

・・・

そこで、オレは決めた。
日曜日。

私は『澤田美容外科』の前に立っていた。

・・・

呼吸を整えて、

ドアに手をかけた。

・・・?!!

私の手の上に、

もう一つ大きな手が覆いかぶさった。

私は驚き、横を見上げた。

「なんで?」

そう問いかけると、

「付き添うことにした」

・・・と、

訳の分からないことを言い出す、

秀明の姿がそこにあった。

・・・

「ふざけてるの?」

そう言って秀明を睨む。

「至って本気。

千波は言い出したら聞かないから、

襲われないように、護衛」

そう言って微笑む秀明。

・・・

秀明は心配性。

私はため息交じりに、

「何で襲われるのよ?

病院の先生に・・・帰って」
・・・

すると、

秀明は先に、

私の言葉を無視して、

中に入ってしまった。

「ちょっと!」


「行くの?行かないの?」


「・・・う」

・・・

問いただされ、

私は仕方なく、

中に入ることにした。

・・・


「千波さんですか?」


診察室から出てきたのは・・・



「敦紀先生ですか?」


お互い、

初めて顔を見合わせた。

・・・

優しく微笑む、敦紀先生。

・・・

絶句する私。
・・・

秀明も、片眉をピクリと

つり上げた。

・・・

「お待ちしてました・・・

横の方は、彼氏さんですか?」

秀明を指差し、

私に質問してきた。

・・・

しかし、

私は一言も言葉を発しない。

・・・

「千波?おい、千波!」

秀明に何度か呼ばれ、

ようやく我に返った。

・・・

敦紀先生は、

てっきり、大分お歳を召している

方だと思っていた私。

・・・

そんな若い先生なら、

この話はなかったことにしてもらいたい。

・・・

この貧乳を、

こんな若くてイケメンな先生に、

見せられるわけがない。
「敦紀先生は、とてもお若い。

この病院の医院長って本当ですか?」

・・・

さっきの質問に答えることなく、

質問返しをした私に、

怒ることをせず、

にこやかに答えてくれた。

・・・

「若く見えますか?

これでも、40歳なんですけど。

…ところで、そちらは?」

・・・

さっきの質問が飛んできた。

「え?あ・・・友人です」

一瞬秀明に目をやった私は、

すぐに敦紀先生に向き直り、

質問に答える。

・・・

「今は友人ですけど、

そのうち彼氏になるものです」

と、わけのわからないことを言い出す

秀明・・・

私はキッと、

秀明を睨んだ。

「誰が彼氏になるって?」
私の質問に、

秀明は知らん顔をした。

・・・ったく。

・・・

「診察室には、ご一緒されますか?」

「「?!」」

私と秀明は、

顔を見合わせた。

・・・

敦紀先生にも、

秀明にも、

『これ』は見せられない。

・・・

考えた私は、

「あの、またの機会にします」

そう言って、

病院をダッシュで、

秀明を引っ張り、

出ていった。

・・・

人通りの少ないところで、

私は足を止めた。

・・・

「どうしたんだよ?」

秀明は私の顔を覗きこんだ。
「あの病院にはもう二度と行かない」

小さな声を絞り出した。

・・・

一瞬目を見開いた秀明だったが、

すぐに微笑みに変わった。

・・・

「診てもらわなくて正解だ。

イケメンの仮面をかぶった変態医師」

・・・?!

何て言い草?!

なぜかカチンときた私は、

秀明のお腹に、

一発パンチをお見舞いしていた。

・・・

不意を突かれた秀明は、

顔を歪めた。


「なんてこと言うの?

そんな人だと決まったわけでもないのに」

お腹をさすっている秀明に、

捨て台詞をはいて、

置き去りにしてやった。

・・・

敦紀先生は、

そんな先生じゃないと思う。

きっと・・・

そう思いたかった。