「私、知ってるの」


愚痴を吐く、という行為は、鈴羅の考える以上に気持ちが良かった。

だからだろうか。
言ってはいけない、と歯止めを掛けていたはずの事を、思わず漏らしてしまったのは。



「黒瀬、小学生の時……親から虐待受けてたこと」
「えっ」


聞こえた声は、真奈だけのものではなかった。
聞き耳を立てていたクラスメートの声が、複数重なって、鈴羅の耳に届いた。

思わずハッとしたが、動き出した唇は止まらない。



「なのに……何であんなに幸せそうなの? 何で、何で!? 親に愛されてないくせに……黒瀬に家族なんて、いないのに!」
「……黙れ……!」