「黒瀬さん、ちょっと席貸してー」
「無理。使うから」


鈴羅の隣の席は、こんな厄介事がしょっちゅう声を掛けてくる。
基本的に席を貸したら休み時間明けまで返ってこないため、瑞姫は滅多に席を立たないのだ。



「……やっぱ黒瀬嫌だな」
「だよねー! 椅子くらい貸せよ、みたいな?」
「鈴羅ちゃんも災難だよね、あんな奴の隣なんてさ」



こそこそと聞こえる陰口には蓋をした。

……嫌われることには慣れているから。
慣れてしまっているから。