「ごめんなさい、我儘言って。やっぱりドライブでいいよ」



そう言って、すぐ横に置いてあったバッグを掴んで立ち上がった。


なんとなく振り返ることはできなくて、そのまま玄関へと足を進めていると……



「奈留、待って」



この静かな空間に、彼の声が響いた。


その場で足を止めたけれど、やっぱり振り返ることはできなくて。


そのまま立ち竦んでいると、彼がすぐ横にやって来て



「少し話そうか?」



と言ってきた。


だけど、もし別れ話だったらと思うと、怖くて首を縦には振れない。



「おいで」



そのままあたしの手を引っ張ってソファーに座らせた。


彼もその横に座って、一息ついたあと、静かに口を開いた。



「俺、奈留に黙ってることがあるんだ」