笑いすぎだよ、直。
歩くの遅いよ、直。
抜かしちゃうぞ。
「前を見て歩きなさい。」
俺は追い抜かしながら、直の頭に手を乗せそうになった。
ぐっと堪えて、俺は手をポケットに入れる。
里田依子、俺を好きだと言う生徒。
俺の家の周りをうろうろしている危険な生徒。
俺の腕に絡み付いて、俺の家に遊びに行きたいと言い出した。
くっつくなよ…
直が悲しい顔するだろぉ。
「彼女に誤解されるから家には入れません。」
ちらっと目が合った直は、不安げな表情をしていた。
まだ問題は山積みだ。
これからも、問題だらけの俺と直の恋愛。
大丈夫、大丈夫。
あまりにしつこい里田に、俺は渋々OKしてしまった。
「1回だけだぞ!しかも、お前らみんなで来い!」
言った後に気付いた。
え・・・
お前らみんなってことは、直もってこと。
えーーーーー!!
俺、そういえば彼女である直を家に連れてきたことなかったっけ。
生徒と教師だから、そんなの当たり前だけど…
動揺した俺は、曖昧に笑いながら、足早に歩く。