「ユイ…」

「なぁに?」


 見返されて、ミサトは黙り込む。

 自分が今何を言おうとしていたのか…それをうまく言葉にすることは出来なかった。

 ミサトは、軽く頭を振る。


「…なんでもない」


 そう言ったとき、軽い振動とともに、急にエレベータ ーが止まった。


「…うそ」


 茫然と呟くミサト。

 ユイは非常ボタンを押すが、何の応答もなかった。

 しばらくすると、エレベーター全体がぐらりと揺れる。

 そして間もなく、轟音とともにエレベーターが真っ逆さまに落ちた。


「ねぇ…とてつもなく悪いタイミングで帰ってきたんじゃ ないの?」


 昇降ホールの作業用の溝に掴まりながら、同じように壁にへばりついているユイを見下ろして、ミサトは言った。


「帰ってきたんじゃないわ。“呼び戻された”のよ」


 頬にかかる長い黒髪を手で払いながら、ユイは答える。