心当たりは、まるでなかった。

 ただ、エイジが最後に絡んでいた組織が“ホン・チャンヤー”だったというのを突き止めただけ。

 その本拠地がたまたま、あの酒場の近くだった。

 そして、その酒場でレンに出会う。


『この男は、オマエの探しているモノを知っている』


 あの時ハクは、確かにそう言った。

 だが、ミサトは老人を訪ねた目的を、話してはいなかったはずだ。


「…うそ…」


 茫然と呟く。

 そんなミサトに気付いたレンは、訝しげな視線を送る。


「どうした?」

「…ねぇ…ハクっていう人って、どんな顔を持ってた?」

「おめぇはいきなり、何を言いだすんだよ?」

「あたしが知ってるのは、ただのどこにでもいるじいさんの顔だった…」

「…俺が知ってるのは、酒場の店主の顔だ」


 仕方ない、という風にレンは答える。