ミサトは目を伏せる。

 ただ機械的に任務を遂行する、それがどんなにつらいものだったか。

 だから任務を遂行した後にはいつも、一人になっていた。

 ホン・チャンヤーの前のボス、ハクと出会ったあの日のように。


『わしも、雨は好きじゃよ。雨は全てをみんなを洗い流してくれるような気がしてな…。しがらみも、その手についている血、なんかもな…』


 頬杖をついていたミサトは、ふと、顔を上げる。

 ハクと一番最初に出会った時の会話。

 まるで、隠そうとしている自分のことを全て見透かされたようだった。

 何か、違和感を感じる。

 レンと初めて出会ったのは、老人の酒場『AGORA』。


『何かあったら、尋ねてくるといい』


 エイジを探すため。

 でもどうして、自分はあの店に行ったのか。