「おじいさまの残したもの…。そして、その意味を知るため、かしら?」

「前のボスの、残したもの…? 生前に、ですか?」

「そうよ」


 そう答えて、ユイは中空を見つめる。

 組織の前のボス、ハクが何をしたかったのか。

 今は、それを追求したいと思っている。

 そのためには 、レンとエイジと…そして、ミサトのことを、もっとよく知らなければならない。


「…そのために、ロンに正面から戦おうなんて危険を冒してまであの人たちを探しているんですか?」


 秘書は、信じられない、という視線をユイに送る。

 彼女も、裏の世界に身をおくからには、今のユイが何をしているのか、十分にわかっているのだ。


「…まさか」


 コーヒーを一口飲んで、ユイは苦笑する。


「その為だけなら、自分の命をかけたりはしない。あの三人は、私の大切な友達だから、よ」


 秘書は肩をすくめて部屋を出て行く。

 守らなければならないもの。

 そして、失ってはならないもの。

 何も、一緒にいなければならないってワケではないと思う。

 ここでこうやって椅子に座りながらだって、出来ることはある。

 あの3人の何も照らされていない道に、ほんの少しでも明かりを灯すことが出来たら、それだけでいい。

 ユイは、コーヒーをまた一口、飲んだ。