「本当は、もどかしいんじゃないですか?」


 組織の中で腕利きと恐れられていても、こういう所が女性ならではの気遣いなのね、とユイは感心する。

 ユイがこの秘書を気に入っているのは、組織のボスとしてではなく、一人の人間として彼女が自分に接してくれるからだった。


「そうね…。でも、仕方ないわ」

「…もうひとつ、質問していいですか?」

「答えられる範囲ならね」

「何の為に、そこまで…?」


 何のために。

 今の自分は、事実上『ホン・チャンヤー』のボスなのだ。

 組織を守る為、力を尽くさなくてはならない。

 それでも、この一年ただ遊んでいたワケではない。

 何の為に、というならば。