◆
次の日。
えっと、…そうだ。千葉だ。千葉さんだ。
俊はやっとこさ後ろの席のクラスメートの名前を思い出し、昨日のばんそうこうのお礼を言おうと思っていた。
ナイスタイミングで彼女がそっと登校してきて。
これまたナイスタイミングで窓際に友人と腰掛けていた俊の方に彼女の視線が移動したから、自然と声が出た。
「あ、ち……」
“千葉、昨日はありがとう。“
…あれ。
一瞬目があったのに。
その中途半端に投げ出された言葉は、彼女に思い切り視線をそらされた事により、どこかに消えてしまった…。
難しい顔をしながら自分の席へと足早に歩く彼女を見ながら、俊はまたポリポリと頭をかく。
「(なんか…怒ってる…?)」
チャイムがなり、彼女の前の自分の席に戻っても、なんとなくタイミングの逃して、結局喋りかけられずに1日が終わってしまった。