工藤はヨイショっとカバンを肩にかけ直した。
「…それでも、受けるだけ受けたかったな。」
「しゃあねぇよ。こればっかりはお前が悪いんだからな。」
「…だな。」
何を言っても後の祭り。
今日もダラリとやる気なく帰り支度し、とぼとぼと廊下を歩く俊の背中に、
「滝井君っ、」
走って来たのか、担任の少しうわづった声が刺さった。
…
…
◆
慰めのようなものだった。
担任から「硬式は無理だけど、軟式なら通常の部活と一緒の扱いだから入れますよ。」という言葉で、そんな堅い決意もなくフラフラと入部届けにサインした。
帰宅して、何の高揚感もなくバリカンのコンセントを入れる。
「半年ぶりか。」
バリバリと音をならしながら肩に半年分の髪が落ちる。
後ろはいつも弟にしてもらっていたけれど、その日は生憎友達のうちに泊まるとかで不在だった。
手探りでバックも刈り、ふぅと息をつく。