【番外編:滝井少年の苦悩】





「(…最悪だ。)」


いや、どう考えても自分が悪い。

それは良く分かっている。


それでも今はただ落ち込ませて欲しい…。


受け取られる事の無かった入部届けを握りしめ、がっくりうなだれる滝井少年に、若い担任はオロオロと励ましの言葉をかけた。

「うん、まぁね、うん、…ちょっと特殊だからね、うん、それにパンフレット隅々まで読まないと、気付けないよね、うん、ごめんね可哀想だけども…。」


「ど、どうにかなりませんか…?」

「うーん、こればっかりはねぇ…ならないねぇー…。本当にごめんね…。」


「いえ、…すみませんでした。」

ぺこりと頭を下げ、まだ申し訳なさそうにしている担任を背に職員室を出た。


ああ、


でもやっぱり凹んでしまう。





野球部は入学前に入部テストがあるなんて。




なんできっちり学校のパンフレットを隅々まで読まなかったんだ。


俊(しゅん)はため息を吐きながら校門を後にする。


…おかしいなとは、思っていた。


確か硬式野球部はもれなく寮に入らなければならないハズなのに、学校が始まっても特にそんな説明も無く。


んん?入部届け出してから寮に入る手続きを聞くのか?などと見当違いな事を思っていた。