今のは、ヤバい。
こんな一瞬一瞬に、滝井くんの事をもっと好きになる。
空に叫んだ滝井くんも、
慌てて走ってきてくれた滝井くんも、
こんな下手くそな歌を毎日聞いてくれていた滝井くんも、
出来るだけ緊張しないように気を配ってくれた優しい滝井くんも。
どんどん積もり重なって、澄香はなんだか泣きたくなった。
「あのね、」
「うん。」
「クリスマスに渡そうと思って編んでたマフラーは、何故か腹巻きみたいになりまして…、机に眠ってます。」
「あははっ、腹巻き…っ」
「それからチョコケーキは、…家で“お父さん”という大きなネズミが出まして、かじられてしまいました。」
「それはまた…ハハッ、大きなネズミだな。」
「それから、それから…3月の誕生日に渡そうと思ったクッキーは、…私が食べちゃった。」
少し下を向いて、ちょっと前の勇気がなさすぎた自分を思い出す。
どの道、トラブルがなくても、覚悟がなければ渡せない。
渡せなかったのだ。
「でも…っ、でもね!」