澄香は記憶の中の滝井くんを掻い摘んで引っ張り出してみる。
教室での滝井くんはとにかく眠そうで、少し不機嫌そう。
シャープな顔立ちだから余計に口をムッと閉じていると、どことなく怒っているような…。
友達と会話している滝井くんは時々カラカラと笑う。それはもう爽やかに。普段あんまり見れない大口に、キュンとする。
言葉も今より少し荒くたに使っている気がする。
部活中の滝井くんはそれはもう真剣そのもので。
帽子を取って汗を拭う仕草なんて、眩しすぎてとてもじゃないけど直視出来ない。(でも、やっぱりもったいないから凝視するけど。)
今の滝井くんは…、
なんだか吹っ切れたような、心底楽しそうな雰囲気で、そして喋り方がいつもより柔らかい。
「(“私”と喋る滝井くんて、こんな感じなんだ…。)」
「そんな訳で、」
「あ、は、はい。」
澄香は飛び跳ねて背筋を伸ばした。
「俺はここ一年、…まぁ勝手に期待していた事には変わりないんだけど、とにかく何度も肩すかしを食らって、」
「…。」
「若干、もう諦めかけてた。このまま、うっすらあった接点もなくなって、千葉もだんだん俺に飽きて、そのままフェードアウトするんじゃないかって。」
飽きるだなんて…っ!
澄香は首をブンブンと横に振る。
そこまで遠くを見ながらぼんやり喋っていた滝井くんが、またくるりとこちらに顔を向けた。