「んーっ!はぁ。ところでマフラーは完成した?」
「へっ?!」
あまりにもあっけらかんと話すので、澄香は一瞬なんのことだか分からなかったが、
その1秒後に、したくもないのに理解してしまった。
「あ…う…ぁ…」
「チョコケーキは?上手く焼けた?」
「あ…わ…わ…」
「誕生日のクッキーは結局何味にしたの?プレーン?」
「…あの、…もうそのへんで勘弁してくださ…っ」
筒抜け過ぎて泣けてくる。
半泣きの澄香に滝井くんはまた眉を困ったようにひそめて笑った。
なんだかとっても楽しそう。
不思議だ。
あれだけ見て来たはずなのに。
滝井くんの知らない顔がいっぱい。
本当にいっぱい。
「…不思議だな。」
ポソッと呟いた滝井くんを思わず凝視する。
「なんだか千葉の事、良く知ってたつもりでいたけど、やっぱりどこか新鮮だ。」
あ…。
澄香は胸にポッと暖かい火が灯ったように感じた。
「…私も。…多分“私と”喋ってる滝井くんが新鮮なのかも。そんなのほとんど見たこと無いし。」
「…そうだな。」
あれだけ関わる事自体、気後れしていたのに。
いざ隣に並んで喋ってみると、思いの外居心地は悪くなかった。
多分それは、自分といる滝井くんが思った以上に穏やかだから。