「初めは、冗談なんじゃないかって思ってた。」
手をキュッと繋いだままにしてくれているのが嬉しくて、澄香は少し下を向いた。
「だって俺、千葉には嫌われてるって思ってたし。」
「え?!」
なんで?!
目を丸くして彼を見上げる。
「だって、あからさまに避けてただろう?」
「…あーー…。」
心当たりがないわけではないので、澄香は気まずそうに黙り込んだ。
それを見て、意地悪が成功した子供みたいに滝井くんが笑う。
でも決して、嫌いで避けていた訳ではないのだ。
強いて言うなら、“好き過ぎて。”
いつの間にか見るのもドキドキして、いてもたってもいられなくなってた。
「何回も何回も、飽きもせずそういう会話が耳に届いて。」
「…。」
うひゃー…。
「でも、教室じゃ目すら合わない。本当に、いったいどっちなんだよって、気が付いたら千葉ばっかり気にするようになってた。」
手を離し、ぐいっと両手を上に上げて滝井くんはうーんと伸びをする。