逃げるな、私。
勇気だせ、私。
澄香は走った。
いつもなら最後までみんなを見送る側なのに、部活が終わるとともに猛ダッシュした。
“逃げるなよ!待ってろ!”
ごめん。
とっさに逃げてしまってごめん。
もう逃げないし、今後はちゃんと
自分から行きます。
階段を駆け下り、カバンを宙に浮かせながらバサリと玄関に降り立つ。
自分の靴をエンジンでもかかっているように素早く取り出し、前のめりになりながら足を押し込んだ。
もう、空が薄くオレンジ色に染まって来ている。
澄香は高鳴る胸にギュッと手を当てながら、第4グラウンドまで思い切り土を蹴った。