「…見てたのか?」
「あぁ」
「…」
黙ってしまった。
俺も何を言えばいいのかわからない。
「追いかけなくていいのかよ…」
「お前の話が先」
「…俺告ったよ」
「…そう」
聞いてたし。
知ってるけどいい気はしない。
「佐々木を泣かせるお前なんか信用できねぇって…」
「…」
それも聞いてた。
「俺ってさ、バカだよな。彼氏いる相手になにやってんだろ。もっとはやく知りたかった…。」
「…バカかどうかは知らねぇけど。愛梨の鈍感さにもちょっと問題あるからな。」
こいつはこいつなりに気持ちを整理してたんだ。
「でもやっぱ…好きなんだよ…。だけど泣かせたくはなかった。悲しませたくはない。」
「そう」
「だから、ちゃんと気持ちにけりつけたい。謝りたい…。ま、振られることはわかってるけどな。」
「…」
「お前にも…ごめん」
「…いいよ。俺も人のこと言えねぇし…。」
名波を傷つけたことに変わりはない。
「あ、今さらだけど俺。中上康人」
「…俺は吉田悠希」
名前を知って。
多分お互いの繋がりができた瞬間だったと思う。