部屋に戻っても蓮司は立ったまま


「てめぇは何してんだよ」

……何してる?
何の話だろ……?


「女だって自覚あんのかよ」

昨日の話の続きみたいだ。

逆に、私が返事を訊かずに終わってたはず……


「だからそれは「あいつも部屋入れたのかよ」

「……えっ?」


話がとんだ。
あいつ…って誰だろ?


「さっきの腰抜け」

「………峰君?腰抜けってあれは蓮司が「で?」

また話を遮られた。

蓮司が何の話をしたいのか全然分からない

「……あるよ」

一人暮らしの家は集まる時、絶好の場所とされる。

中学卒業時の打上げはここであった。

でも羽目は外さないし、外させない。
私は家賃を払ってない居候だ。
近所迷惑なんて絶対しない。



「……………つく」

「え?」

「ムカつくんだよ」

「ちょっ!蓮司!」


いきなりだ。
腕を掴まれたと思ったら引きずられた

そのまま部屋の奥へ。
襖を開けた先へ

寝室に入るとベッドに投げられ、そのまま上に跨がられた。


「れん…じ?何する……気?」

言葉がうまく出せない。

自由の利かない体

怒ってる蓮司

その瞳は獣の様に私を射る


―――――全てが恐い




―――――――――
―――――――
―――――

目が覚めたら全部夢だった。



上手い表現だと思う。


気持ちの良い朝日が差してる朝をいつもと同じと思えた。

――――腕を見るまでは


手形がくっきりついた両腕

部屋を見渡し蓮司を探す


玄関に蓮司の靴が無いことを確認して鍵を締めた。




ベッドに座り込んで考える

初めての喪失。――――こんな形で


血さえも付いてないシーツに普通に歩けた体が余計に悲しかった。






結局、次の日―――土曜日も日曜日も蓮司は来なかった。

静かな週末をただ泣いて過ごすだけ



side*蓮司




ただ静かに眠る鈴を見て、なるべく静かにベッドを降りた。



有るのはただ、満たされない気持ちだけ。
最初の様な気掛かりはない…

なのに。


鈴の声が頭から離れない

ずっと、俺の名前を呼び続けてた切ない声が――――



そんな声を聞きたくなくて口を塞いだ。

抵抗させない様に無理やり押さえつけた。


小さく、細い身体を思い切り攻めた。


手加減なんてない。

―――もともとした事もねぇ

適当に誘われ適当に選んで遊ぶ。全てが合意だった女共とは違う

―――何が?



俺を見る目が違う。

俺を呼ぶ声が違う。

触れ合う唇が違う。


―――違うのは俺の方?


ずっと見ていたかった。

傍に置いときたかった。

その目に俺を映して欲しかった

決して逸らさないその瞳に…俺だけを。





あぁ、俺は鈴が好きなんだ。



やっと気付いたこの感情の正体

初めて感じる愛しい存在

初めてできた守りたい女



なのに―――強姦


女にとってこれ以上の屈辱は無いだろう…

気付いていた。初めてだと



「あの腰抜けとヤル気だったのかよ」


やるせない気持ちしか残らない。

その現実から逃げるように鈴の家を後にした


「鈴!あんた携帯は?」

月曜日、学校に行くと真っ先に夏美がやってきた

「メールも電話もしたんだよ」


……携帯忘れてた。

慌てて鞄の中から取り出して確認する

受信メールも着信も夏美からだけ


良かった。

一人暮らしの私は携帯が手離せない。
連絡が取れないだけで警察沙汰だって成りかねない……


「ごめん夏美。携帯忘れてた」

「も~~。クラス会だって急に来ないし」

「ごめんごめん」

「峰に訊いたら「俺が何?」

「峰君おはよ」

「おはよう。金曜日………大丈夫だった?」

「うん、大丈夫だよ」

笑顔で答える


本当の事なんて言えない

峰君にも。――夏美にも



話はそこで終わった

担任が来たから

「席着け~」


私の席はここ。

峰君と夏美は席へ戻る


「鈴。あんた、大事な事いつも言わないけど…………顔見れば分かるんだからね」


夏美ありがと

やっぱり大好き


放課後になり……
校門に迎えは来なかった。


その事が分かってた私は夏美と帰る

話をするために――




「そっか~蓮司様、怒っちゃったか~」

犯された事は流石に言えない

流石に……ね?


「まぁ峰はねぇ~。タイミング悪かったわ」

何の話?
意味深に言う夏美は何かを分かってる感じ

「峰君と一緒だから怒ってたのかな?」

「ん~~。そういえば鈴って彼氏作んないの」

「へ?」

話が急に変わった。

「前に告白されてたじゃん」


「そうだけど………」

好きって感情がいまいち分からない。
私の好きは全部like

「彼氏作っちゃいなよ」

簡単に言ってくる



夏美には中学の頃からの彼氏――光輝<コウキ>君が居る

凄く格好良くて夏美の事を大事にしてる

彼氏が寮に入ってしまい、遠距離恋愛になってもまだラブラブだ


「夏美達見てて羨ましいと思うよ。でも…分かんないんだもん」


時々、自分の感情が欠落してるとさえ思える
好きって感情が欲しい。


「そっかぁ~」

ありゃ。暗い話にしちゃったかな……


紅蓮の姫

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