土曜日、遂に来た暴走の日
あかりさんが言ってた様に私は参加だった。
………もちろん強制で
倉庫には沢山の人が居る。
紅燕は私が思ってるよりずっと大きな族だった
もう一つ知った事がある。
それは、私が姫と呼ばれてる事
私は蓮司の彼女じゃない。
だから倉庫では下にあまり行きたくなかった。
皆を騙しているようで…
翔太が言うには今回の暴走はまだ小さいらしい。
幾つかの傘下も今回は参加を自粛させたとか…
難しい話に難しい人間関係
何で私は土曜日にまで紅燕に来てるんだろう……
話せる人も、居場所もない。
ただ遠い世界を眺めているだけ
『私の存在って―――』
「鈴ちゃん?下行くよ」
相変わらず優しい翔太
ウジウジと暗くしてちゃ失礼だ。よし、頑張るかっ
「――お前何考えてた?」
いきなり蓮司の低い声が飛んだ。
ん?…………私?
「言え。何を考えてた」
「…特になにも?」
………だよね?
暴走出たくないって思った事に怒ってる?
蓮司達からしたらやっぱ良い気はしないか
思った事謝った方が良いかな?
「…………」
蓮司は私の目を真っ直ぐ見てくる
「あの…」
本当に真っ直ぐ。
目から何かを探る様に
「……もういい。行くぞ」
本当に目から読み取ったのかな?
ごめんなさい。って…
下に行きご飯を食べて走りに出る。
私は蓮司と一緒に車で―――
それだけ。
とてつもなく眠かった。
それが私の感想
バイクの爆音もパトカーのサイレンすらも子守唄になりそうな程に眠かった。
普段、夜更かしはしない私だから眠いのは納得できる。
でも。……何でだろう?
こんなにも非日常な出来事なのに…
こんなにも落ち着いてられるのは…
こんなにも――――
暴走が終わり、またいつも通りに今日も授業を受けた。
SHRも終わり、いつも通りに裏へ行く
――――――が、
何故か校門に人だかり…
女の人ばかりが…
キャーキャー言ってる…
嫌な予感
慌てて窓から覗く。
人垣の中心に居たのは意外にも
「……………光?」
見えたのは金髪と大きな黒いバイク
慌てて校門へ向かった
「光君どうしたの?」
「見んじゃねぇ。近付くな」
滅茶苦茶声をかけられている。
そして、滅茶苦茶怒鳴ってる。
「…光?どうしたの?」
「遅せ~よ!さっさと乗れ」
「え?」
声をかけたら怒られた。
怒りながらもヘルメットを押し付け、自分はさっさとバイクに跨る。
「さっさと乗れ」
意味が分からない。
でも、明らかに嫌そうな光をこのままにするのも可哀想かな?
バイクに乗ると即発進され、慌てて光の腰にしがみついた
「蓮司。用あって今日来れね~から」
信号待ちの時、説明をくれた。
「あ、そうなんだ。迎えありがと」
「…………」
「バイク格好いいね」
「……は?」
「え……?」
意外過ぎる返事が返ってきた。
「分かんのかよ。バイク」
「分かんないよ」
「…………」
うん。私バイクは全然詳しく無い。
ついでに車も全く
「好みの話だよ」
詳しくなくても見た目での判断なら誰だって出来る
「私好きだよ、このバイク」
「………」
「光、小柄だからこのバイクに不釣合いかと思ってた」
「………」
「でも乗ってる光を含めて格好いい」
「………」
走り出してるバイクは風を切る音とエンジン音が凄い。
光が私の話を聞こえてたかは分からない
結局会話はそれだけ。
倉庫に着くとさっさと私を降ろして光はバイクを止めに行った。
お礼だけ言っていつもの様に2階へ行く
―――が、
「鈴!」
階段途中で声をかけられた。
「下、来ねぇ?」
光だ
下の兄さん達は私を姫として扱う。
それが心苦しい
だけど行ってみたい……
「鞄、置いてすぐ行く!」
いつもバイクをガチャガチャ弄ってるのを間近で見てみたかった
すぐに鞄を置いて下に戻ると光がまた声をかけてくれた。
隣には
「ちわっす鈴さん。俺、純<ジュン>って言います」
純と名乗る、原色で染めたんじゃないかって程の――緑髪
「絶対こっちだって。純単純だろ」
「赤が映えますって。ほらっ蓮司さんみたいに格好良く。ですよね、鈴さん」
「蓮司みたいにはならないよ。赤反対」
嫌悪の目を向けない光は―――意外にも私と気が合った。
好みや感覚がモロ一致
「そんなぁ~」
3人での会話はもはや多数決状態となった
光と一緒に下の人達と楽しい時間を過ごし、夕方には光と2階へ戻った
「あ~楽しかった。鈴良い性格してんなぁ」
「あはは。私も楽しかった。今まで下行かなかったの勿体無かったよ。ありがとね」
上に戻っても熱の冷めない会話
「あ、おかえり」
少しして帰ってきた皆が私達の豹変ぶりに驚くほど
隣同士に座った私と光
たった1日で豹変した私達の距離と態度
笑顔の私も珍しく。
笑顔の光も珍しい。私相手に…