「嫌!嫌だよ。私1人にしないで。ここに居て」

「鈴、聞き分けろ」

「嫌だ!お願い行かないで」

タツの腕にしがみつく。


「今日は家から出るなよ」


―――パタン。




しがみついた手はあっさり解かれ、タツは出て行った。



腕の痛みもその時は忘れられた。




もう開かない事を知っていても…


虚しく響いた扉の音を、ずっと玄関で聞いていた。


タツが帰って来なかったその晩を、ずっとその場所で……




side*鈴ーー10年前ーー。end